2024年3月15日から6月9日まで、第8回横浜トリエンナーレが開催。好評のうちに幕を閉じた。
横浜トリエンナーレは、3年に一度の国際美術展。横浜美術館を含む市内5か所の会場に、世界31の国と地域から93組のアーティストの作品が展示された。 テーマは、「野草:いま、ここで生きてる」。
テーマにある「野草」は、中国の作家、魯迅の散文詩集『野草』に由来する。 アーティスティック・ディレクターは、北京を拠点に国際的に活躍をする、Liu Ding(リウ・ディン)とCarol Yinghua Lu(キャロル・インホワ・ルー)。
今回の横浜トリエンナーレの主な特徴は?
国際展に活躍をするアーティスティック・ディレクターがキュレーションする、世界31の国・地域の現代アーティスト達93組の多様な作品が、横浜の各所で見られること。そして、アートに親しむための多数のプログラムが用意されていること。
国際展「野草:いま、ここで生きてる」は、この世界に生きる、わたしたちひとりひとりへのメッセージ。
環境破壊や戦争、経済格差や不寛容――世界は今日多くの問題を抱えている。
二人のアーティスティック・ディレクターが企画する国際展「野草:いま、ここで生きてる」は、野の草のようにもろく無防備で、しかしこうした状況をたくましく生き抜こうとするひとりひとりの姿に目を向けるもの。
展覧会は、魯迅の時代を出発点に、東西冷戦の終結など、今日の息苦しさを生むもととなったこの100年の出来事をたどる。同時に、今この時代に対峙し、変化をもたらそうとするさまざまな作品を紹介。世界中から集まったアーティストたちの作品を通して、我々の生き方をふり返り、制度やシステムの限界を超えて、未来を生きる希望を共に考え、見出したいと考えられたものだ。
世界の現代アートが横浜にやってくる
参加アーティスト93組のうち、20組が新作を発表、日本初出展は31組。
「野草」展には93組の多様な国/地域のアーティストが参加。北極圏の遊牧民、サーミ族の血をひき、人と自然の新たな共生のかたちを示すヨアル・ナンゴ(Joar NANGO)。トランスジェンダーとして既成概念にとらわれない多様性のあり方を社会に問うピッパ・ガーナー(Pippa GARNER)。南アフリカ社会に潜む家父長制や植民地主義と、そこから生まれる不平等をテーマに立体作品を制作するルンギスワ・グンタ(Lungiswa GQUNTA)。ウクライナのリヴィウで結成され、戦時下の市民生活をリアルに伝えるオープングループ(Open Group)。いずれも日本初出展の注目のアーティスト達だ。
注目のアーティスト1 | ヨアル・ナンゴ Joar NANGO
1979年、アルタ(ノルウェー)生まれ、ロムサ/トロムソを拠点に活動。北欧とロシア北部を移動するトナカイ遊牧民「サーミ族」の血筋をひく。地域内の資源循環に関心をもち、現地の素材をとりいれた仮設の構築物をつくる。それは資源不足や気候変動に直面する今の社会に対し、先住民の知恵にならった人と自然の共生 のあり方を示す実践である。本展では横浜美術館のファサードに展示予定の「サーミ族」のことばを用いた作品にも要注目。
注目のアーティスト2 | Lungiswa GQUNTA(ルンギスワ・グンタ)
1990年、ポートエリザベス(南アフリカ)生まれ、ケープタウンを 拠点に活動。南アフリカにおける家父長制や植民地主義から生まれた不平等がひそむ「風景」を立ち上がらせる作品で知られる。有刺鉄線を編んだインスタレーションに布や身近な音などの柔らかい素材を組み 合わせ、冷たさと暖かさの対比、異なる意味の重なりを生みだす。本展では横浜美術館内の無料エリアで有刺鉄線を使ったダイナミックな新作を展示。
注目のアーティスト3 | Open Group(オープングループ)
2012年、ウクライナのリヴィウで結成されたコレクティヴ。中心メンバーはYuriy BILEY, Pavlo KOVACH, Anton VARGA(ユリー・ビーリー、パヴロ・コヴァチ、アントン・ヴァルガ)の3名。対話や討論、コミュニティへの参加や協働などの実践を通して作品を制作。ロシアのウクライナ侵攻によってリヴィウの難民キャンプに逃れた市民を取材し、戦争や紛争の現状をリアルに伝える作品を日本で初公開。
注目のアーティスト4 | SIDE CORE(サイドコア)
2012年より活動を開始、東京都を拠点に活動。メンバーは高須 咲恵、松下徹、西広太志。個人がいかに都市や公共空間のなかでメッセージを発するかという問いのもと、ストリートカルチャーの思想や歴史などを参照し、制作する。ときに他ジャンルの表現者を交えたプロジェクトとして、都市の死角や瞬間となる場所で多彩な作品を展開。
OVERVIEW
8th Yokohama Triennale | 2024.3.15-6.9
“Wild Grass: Our Lives”