世界各国からギャラリー出展242、来場者75,000人と好調だったArt Basel Hong Kong 2024。
2024年は、HKCEC(香港コンベンション&エキシビションセンター)で3月28日から30日まで開催された。(VIP Previewは3月26日、27日)
40の国・地域から世界有数の242ギャラリーが出展し、VIP向けの2日間のPreviewを含む全5日間に来場者75,000人超と好評を博した。Art Basel Hong Kong 2024は、2019年以来初めてパンデミック前の規模を取り戻した。
セールスも好調で、メガ・ギャラリーの強さが目立った。今回、傑出していたのがHauser&Wirth(ハウザー&ワース)で、Willem de Kooning($9 million)や、Philip Guston($8.5 million)をはじめ、Mark Bradford($3.5 million)その他多くの超高額な作品を販売した。その他の著名ギャラリーでも、Acquavella Galleries(アクアベッラ・ギャラリー)ではのGeorg Baselitz($1.5 million)が、White Cube(ホワイト・キューブ)ではLynne Drexler($1.2 million)が販売されるなど、高額販売の上位は、やはり欧米のメガ・ギャラリーの独壇場だった。
日本人の作家では、草間彌生の人気は根強く、Mika Tajima(TARO NASU)や、Encountersで注目を浴びた高田冬彦(WAITINGROOM)の作品の販売も注目を集めた。
今回のArt Basel Hong Kong 2024も、Encounters(エンカウンターズ)やCabinet(キャビネット)などのセクションを通じて提示される芸術表現の並外れた多様性や、Conversations(カンバセーションズ)やFilm(フィルム)といった多彩なプログラム、香港の美術館や文化機関とのコラボレーションにより、豊かで活気あふれるインスタレーションや展覧会などが展開され、アジアという地域を超えた文化交流の場としても、重要な役割を果たしていた。
Art Basel Hong KongのディレクターのAngelle Siyang-Le(アンジェル・シヤン=ルー)氏は、「香港は活気に満ち、伝統と前衛が交差する場所で、文化の玄関口であり、地域を超えて進化するアートシーンにおいて欠くことのできない架け橋です。アートバーゼル香港は、成長を続けるアジアのアートシーンにおける重要な拠点であり、世界のアート市場にとって毎年欠かせない一大イベントであり続けるでしょう」と語る。
香港では、アートフェアと並んで、コマーシャルな側面でも充実しているのが特徴だ。世界の有力ギャラリーであるGagosian、Hauser&Wirth、White Cubeなどが支店を構え、高いレベルの作品群を展示。また、Sotheby’s、Christies、Philipsといったオークション・ハウスの活発な活動は、香港、中国本土のみならず、アジアや欧米などのコレクターを引き付けている。
5月始めに発表されたArt BaselとUBSの美術品市場レポートの最新版によれば、2023年、中国市場(中国本土と香港を含む)は、2023年に英国を抜いて世界第2位の美術品市場となり、そのシェアは19パーセントに拡大。世界の市場全体が前年比4パーセント減と減速する中で、中国市場の売上は回復を見せ、9パーセント増の122億ドル(推定)に達したとされ、世界の美術品取引における香港の重要性はますます高まっている。
見どころ1 | 「Encounters」Daniel Boydの大規模インスタレーション
大規模プロジェクトに特化した「Encounters(エンカウンターズ)」は、16作品のうち11点は、今回のフェアのために特別に制作された。今回のプログラムのテーマは「わたしは出会ったものすべての一部である」、キュレーションは、アートスペース・シドニーのエグゼクティブ・ディレクターであるAlexie Glass-Kantor(アレクシー・グラス・カントワー)氏が担当。
なかでも注目は、シドニー在住のアボリジナルのアーティスト、Daniel Boyd(ダニエル・ボイド)によるサイト・スペシフィック・インスタレーションであるDoan, 2024 (ドアン、香港のパシフィックプレイスに展示)。
Doanとは、オーストラリア先住民アボリジニのユガンベ語で「darkness(闇)」という意味。この作品は、ドットを使用して視覚的要素と概念的要素の両面から、アイデンティティ、記憶、知覚、歴史のテーマを考察し、鑑賞者はインスタレーションの中を移動しながら、過去、現在、未来という時間を超えて、その進化を考察するよう促される。
見どころ2 | 「Discoveries」日本人アーティスト 高田冬彦の映像作品
「Discoveries(ディスカバリーズ)」は、ギャラリー・ブース内にて、個展形式で新進アーティストを紹介するセクション。ここで注目を集めたのが、日本人アーティスト高田冬彦(WAITINGROOM)の映像によるインスタレーション『Cut Pieces』。
高田冬彦は、神話や伝説、おとぎ話といったファンタジーの世界を下敷きに、ユーモアに満ちた映像作品を制作。監督・撮影・ナレーション、そして出演までこなす高田は、権力、国家、ジェンダー、セクシュアリティにまつわる社会問題を、独特の手法で作り込まれた作品を通して、遊び心たっぷりに問いかける。
Eye from ART PREVEW TOKYO
世界中の選りすぐりのギャラリーが作品を出展し、アートの国際見本市(フェア)の中でも、質、規模ともに世界一を誇るArt Baselのアジアにおけるフェア、Art Basel Hong Kong。
アート・フェア、香港の美術館や文化施設、ギャラリー、オークション・ハウスなど、香港のアート・ワールドがその魅力を遺憾なく発揮し、アジアの独自性や多様性を含む多彩なプログラムを、グローバルに通用するレベルとパワーで魅了する、アジアで最大かつ最高の香港の一大アート・イベント。現在、アジアのアーティストの作品の質の高さも相まって、世界中からコレクターが香港に押し寄せる。
ギャラリーや作家にとって、恰好のプレゼンテーションの場となり、美術関係者にはアートのトレンドを把握する場として、単なる見本市以上の役割を担うArt Basel Hong Kong。アジアのアート・ハブとして、情報も集まり、発見もある。抑えておきたいアート・フェアの1つである。
OVERVIEW
Art Basel Hong Kong 2024 | 2024. 3. 28 – 30(VIP Preview 2024. 3. 26, 27)
ART BASEL