「SOURCE」がテーマの「KYOTOGRAPHIE 2024」
今年12年目を迎えた「KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)2024」(会期:2024年4月13日-5月12日)が、京都市内各所の歴史的建造物などを舞台に開催され、好評を博して幕を閉じた。
生命、コミュニティ、先住民族、格差社会、地球温暖化などの社会的課題を包含する「SOURCE」(源)をテーマに、10カ国・13組のアーティスト達の作品が12か所で展示された。
アーティスト達は、このテーマに関して、アートという表現を使用して、どのようにオルタナティヴな未来を提示したのか。
ART PREVIEW TOKYOでは、3人のアーティストにスポットライトを当ててみた。
KYOTOGRAPHIEの常設展DELTAは、こちら。
注目のアーティスト1 | Claudia Andujar(クラウディア・アンドゥハル)
《ヤノマミ ダビ・コぺナワとヤノマミ族のアーティスト》
ブラジル人アーティストのクラウディア・アンドゥハルとブラジルの先住民族ヤノマミとのコラボレーションを発表する日本初の展覧会。
1931年、スイスで生まれのアンドゥハルは、ルーマニアのトランシルヴァニア地方で育つ。ホロコーストを生き抜いたアンドゥハルは1946年ニューヨークに渡り、その9年後に、ブラジルに移住して写真家としてのキャリアをスタート。
アンドゥハルが写真家として特に強い関心を寄せたのは、社会的弱者のコミュニティ。1971年、ヤノマミ族(ブラジルのアマゾンに住む最大の先住民グループのひとつ)を初めて訪問。この出会いがアンドゥハルのライフワークの出発点となる。
彼女にとって、アートはヤノマミの人々のための意識啓発や政治的活動のツールとなった。アンドゥハル、コペナワ、そして多くの活動家たちが力を合わせ、ヤノマミ独自の世界観や土地の権利の尊重を求める闘いを繰り広げ、その結果、1992年、ヤノマミ居留地が保護区として指定され、ようやくその権利が完全に保証されることとなった。
居住地域への侵入や違法行為(採掘や伐採、薬物密売など)がヤノマミにもたらす問題は、決して新しい問題ではない。こうした問題は、ヤノマミだけでなく、ブラジル国内外の数多くの先住民を苦しめている。アマゾンにおける破壊的行為や地球規模の気候変動危機がニュースでも大々的に取り上げられるようになった今、本展は、世界各地の先住民の人々への理解やその主権の拡大のためにアートが担う役割を示すものでもある。
会場:京都文化博物館 別館
注目のアーティスト2 | Thierry Ardouin(ティエリー・アルドゥアン)
《種子は語る》
種子は、野生の植物の栽培化や商品化を通じて、人類文明の発展にも寄与してきた。新石器時代には、作物の栽培によって人類の定住が始まり、社会規範や土木技術が形成された。古代では植物は学者たちにとって魅力的な研究テーマとなり、中世には物々交換や収集の対象だった。近代に入ると、種子は探検家たちとともに長距離を移動するようになると、農 業、科学、美学、商業を背景とした人類の欲望に翻弄されながら、種子は今も世界中を駆け巡る。植物のエネルギーは国境を越えて広がり、その壮大なスケールの旅は地球の多様性の象徴となっている。種子は、政治や科学、知識が絡み合った、人間と自然の複雑な関係性を物語る。
本展は、写真家ティエリー・アルドゥアンとグザヴィエ・バラルおよびフランスの出版社 Atelier EXB との長年にわたるコラ ボレーションの一環として開催。アルドゥアンは、世界各地の 500 種以上の植物の種子の写真を撮影し、その種子の大半が、フランス・パリの国立自然史博物館の所蔵品だ。撮影にはオリンパスが開発した実体顕微鏡を使用し、被写体となる種子の選定やライティングには細心の注意を払った結果、捉えられたイメージは意外性あふれる形態と美しさを提示している。アルドゥアンは、本展のために、京都の農家が代々受け継ぎ栽培している「京野菜」の 種子の撮影も行った。種子の物語は、原始農業から現代のハイブリッドな種子に至るまで、果てしない多様性に満ちた世界における生命の生存戦略に改めて光を当てたもので、種子を通じて、私たち人類の起源だけでなく、未来の世界像までもが見えてくる。
会場:二条城 二の丸御殿 台所・御清所
Presented by Van Cleef & ArpelsIn collaboration with Atelier EXB
注目のアーティスト3 | Viviane Sassen(ヴィヴィアン・サッセン)
《PHOSPHOR|発光体:アート&ファッション 1990–2023》
1972年、アムステルダム(オランダ)生まれ。ファッションデザインを学んだ後、ユトレヒト芸術大学などで写真を学ぶ。アムステルダムを拠点に活動。
アートとファッションという異なる2つの領域を横断するサッセンの作品は、鮮やかな色彩、仕掛け、フレーミング、被写体へのアプローチにおいても異彩を放ち、唯一無二で多彩な視覚表現を生み出す。
子どもの頃にアフリカで育ったバックグラウンドや、文学や美術史は、サッセンにインスピレーションの源泉で、死、セクシャリティ、欲望、他者──そのすべての関わりが、写真や映像、ペインティング、コラージュを組み合わせる作品群を構成するモチーフへと昇華され、首尾一貫したコンセプチュアルな作品を生み出している。本展は、2023年にMEP(ヨーロッパ写真美術館 フランス、パリ)で開催されたヴィヴィアン・サッセンの回顧展の巡回展。
会場:京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡)
Presented by DIOR In collaboration with the MEP – Maison Européenne de la Photographie, Paris
本テキストはKYOTOGRAPHIE公式の展覧会ページからの引用に基づく.
OVERVIEW
KYOTOGRAPHIE International Photography Festival 2024 | 2024.4.13-5.12