EXHIBITION Philippe Parreno: Places and Spaces|Pola Museum of Art 2024.08.01
《私の部屋は金魚鉢》2024年 Courtesy of the artist, Photo by Ken Kato

現代のフランス美術を代表するアーティスト、フィリップ・パレーノの国内最大規模の個展「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」が箱根のポーラ美術館で開催された。 

 フィリップ・パレーノ(1964年オラン、アルジェリア生まれ)は、パリを拠点とし、映像、音、彫刻、オブジェ、テキストやドローイングなど多岐にわたる作品を制作。先進的なテクノロジーを積極的に採り入れながら、リアム・ギリック、ダグラス・ゴードン、ティノ・セーガルなどアーティスト、建築家、音楽家とのコラボレーション(協働)で、国際的に高く評価されている。

 

無限の可能性を提供するメディアとしての展覧会

 そんなパレーノの特徴は、映像、彫刻、ドローイング、テキストなど多様な手法を用い「展覧会を一貫したひとつのメディア」として捉えるところにある。Site specificな展覧会を矜持とするフィリップ・パレーノは、この緑と光あふれるポーラ美術館で、どのような展開をみせるのであろうか。

まず、見逃せないインスタレーションから。
本サイトでは展覧会全体をおみせすることはできないので、個々のインスタレーションの画像から、展覧会の全体像をイメージしてほしい。

展示室 1

《私の部屋は金魚鉢》2024年 Courtesy of the artist, Photo by Ken Kato
《マリリン》2012年 ポーラ美術館蔵
《マリリン》2012年 ポーラ美術館蔵, Photo by Ken Kato

展示室 2

《ふきだし(ブロンズ)》2024年 Courtesy of the artist
《ふきだし(ブロンズ)》2024年 Courtesy of the artist, Photo by Ken Kato
《どの時も、2024》 2024年 Courtesy of the artist
《どの時も、2024》 2024年 Courtesy of the artist, Photo by Ken Kato
《どの時も、2024》 2024年 Courtesy of the artist
《どの時も、2024》 2024年 Courtesy of the artist, Photo by Ken Kato

 

Site specific:ポーラ美術館でしか体感できない美術体験

《私の部屋は金魚鉢》2024年 Courtesy of the artist
《私の部屋は金魚鉢》2024年 Courtesy of the artist, Photo by Ken Kato

 仙石原の森を背景に、外光をとりこんだ明るい展示空間では、バルーンでできた色とりどりの魚が空気中をゆらゆら漂っている。まるで大きな水槽の中で魚と戯れているような鑑賞体験ができる。
 夏から秋へと季節が移り変わると、展覧会場の大窓から見える屋外の森、差し込む光も異なり、インスタレーションもまた異なる光景となることであろう。

 作品を展示するスペース、空間はいつも気にかけていて「空間に呼応するように作品を見せたい」というパレーノ。自然の光と緑を感じながら鑑賞できるポーラ美術館の特徴を最大限に生かした、パレーノのsite specificな“メディア”としての展覧会。

 パレーノの企み通り、ここでの鑑賞体験は、美的なコミュニケーションとして、より積極性を帯びるものとなるかもしれない。

Eye from ART PREVIEW TOKYO
 展覧会の建物やスペースの個性を大切にし、展覧会をひとつのメディアとして作り上げるパレーノ。どの展覧会でも開催される場所に非常に特化しているため「展覧会を“巡回”することはしない」と語る(Art Reviewのインタビューより)。
 新旧の代表作や過去に同館で発表した作品などを交えた構成や、自然を生かした展示に、現代アートを心ゆくまで体感できる。
 来年の岡山芸術交流のアーティスティック・ディレクターに選任されたパレーノ。次はどのようなsite specificな仕掛けを見せてくれるであろうか。

OVERVIEW
Philippe Parreno: Places and Spaces | 2024. 6. 8 – 12. 1
「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」
Pola Museum of Art

CONTEMPORARY ART POWER from Tokyo