現代のフランス美術を代表するアーティスト、フィリップ・パレーノの国内最大規模の個展「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」が箱根のポーラ美術館で開催された。
フィリップ・パレーノ(1964年オラン、アルジェリア生まれ)は、パリを拠点とし、映像、音、彫刻、オブジェ、テキストやドローイングなど多岐にわたる作品を制作。先進的なテクノロジーを積極的に採り入れながら、リアム・ギリック、ダグラス・ゴードン、ティノ・セーガルなどアーティスト、建築家、音楽家とのコラボレーション(協働)で、国際的に高く評価されている。
無限の可能性を提供するメディアとしての展覧会
そんなパレーノの特徴は、映像、彫刻、ドローイング、テキストなど多様な手法を用い「展覧会を一貫したひとつのメディア」として捉えるところにある。Site specificな展覧会を矜持とするフィリップ・パレーノは、この緑と光あふれるポーラ美術館で、どのような展開をみせるのであろうか。
まず、見逃せないインスタレーションから。
本サイトでは展覧会全体をおみせすることはできないので、個々のインスタレーションの画像から、展覧会の全体像をイメージしてほしい。
展示室 1
展示室 2
Site specific:ポーラ美術館でしか体感できない美術体験
仙石原の森を背景に、外光をとりこんだ明るい展示空間では、バルーンでできた色とりどりの魚が空気中をゆらゆら漂っている。まるで大きな水槽の中で魚と戯れているような鑑賞体験ができる。
夏から秋へと季節が移り変わると、展覧会場の大窓から見える屋外の森、差し込む光も異なり、インスタレーションもまた異なる光景となることであろう。
作品を展示するスペース、空間はいつも気にかけていて「空間に呼応するように作品を見せたい」というパレーノ。自然の光と緑を感じながら鑑賞できるポーラ美術館の特徴を最大限に生かした、パレーノのsite specificな“メディア”としての展覧会。
パレーノの企み通り、ここでの鑑賞体験は、美的なコミュニケーションとして、より積極性を帯びるものとなるかもしれない。
Eye from ART PREVIEW TOKYO
展覧会の建物やスペースの個性を大切にし、展覧会をひとつのメディアとして作り上げるパレーノ。どの展覧会でも開催される場所に非常に特化しているため「展覧会を“巡回”することはしない」と語る(Art Reviewのインタビューより)。
新旧の代表作や過去に同館で発表した作品などを交えた構成や、自然を生かした展示に、現代アートを心ゆくまで体感できる。
来年の岡山芸術交流のアーティスティック・ディレクターに選任されたパレーノ。次はどのようなsite specificな仕掛けを見せてくれるであろうか。
OVERVIEW
Philippe Parreno: Places and Spaces | 2024. 6. 8 – 12. 1
「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」
Pola Museum of Art